子どもに英会話を学ばせるのに効果的な学習方法として、『フォニックス』が注目されています。フォニックスは、これまで日本の中学・高校の英語教育で取り入れられることが少なかったため、フォニックスについてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フォニックスの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
フォニックスの学習方法や、フォニックスを始める時期など、子どもの英語学習を効果的にサポートするためのヒントが詰まっているので、ぜひ参考にしてください。
フォニックスとは
フォニックスとは、アルファベットの文字や文字の組み合わせがどのような音を持つかを学び、それを基に単語を読む練習をする学習方法です。文字と音の関係を理解することで、正しい発音が身に付きます。
フォニックスは英語圏の子どもたちが母国語である英語を学ぶ過程で用いられており、発音だけでなく、読み書きの学習にも非常に効果的です。フォニックスの発音ルールを知っていると、70%程の単語は意味がわからなくても発音できるようになると言われています。
フォニックスの発音ルール
フォニックスにはいくつか発音ルールがあります。ルールを覚えることで正しい発音が習得できます。
アルファベットのフォニックス読み
文字が持つ基本的な音を発音します。これは通常のアルファベット読みとは異なります。
アルファベット | 文字の音 | 例 |
---|---|---|
A | ア | apple |
B | ブ | book |
C | ク | cat |
D | ドゥ | dog |
E | エ | egg |
F | フッ | fish |
G | グ | girl |
H | ハ | hat |
I | イ | ink |
J | ジュ | jelly |
K | ク | kangaroo |
L | ル | lion |
M | ム | mouse |
N | ヌ | notebook |
O | オ | octopus |
P | プ | pig |
Q | クゥ | queen |
R | ゥル | rat |
S | ス | sun |
T | トゥ | tiger |
U | ア | up |
V | ヴ | voice |
W | ゥワ | water |
X | クス | box |
Y | ィヤ | yellow |
Z | ズ | zebra |
※便宜上カタカナで表記していますが、実際の発音とは異なります。
フォニックスのひとつひとつの音をつなげるのが発音の基本です。英語らしい読み方ができるようになります。
短母音と長母音
母音には短音と長音があり、単語の構造によって発音が変わります。
短母音は音を伸ばしたり重ねたりしないで、短く発音します。
具体例
「a・i・u・e・o」=「あ・い・う・え・お」
長母音は母音の持続時間が長いもので、一般的なアルファベット読みのことです。
「a・i・u・e・o」=「えい・あい・ゆー・いー・おう」
・発音しない「e」
単語の最後にある「e」を発音せず、その前の母音を長母音化するルールです。
具体例
make(メイク): 「a」は「エイ」と発音し「e」は発音しない
site(サイト): 「i」は「アイ」と発音し「e」は発音しない
・連続する母音
単語の中に母音が2つ並んでいる場合は最初の1文字をアルファベット読みし、2文字目は発音しません。
具体例
Rain:「レイン」= 「ai」の「a」がアルファベット読みになる
Meat::「ミート」=「ea」の「e」がアルファベット読みになる
・連続する子音
子音が2つ連続した際に全く別の発音をします。
具体例
ch:「ク」
sh:「シュ」
th::「サ」
フォニックスを学ぶメリット
フォニックスを学ぶメリットは多くあります。英語を自然に正しく発音できるようになることで、リスニングやスピーキングの能力が向上します。
文字と音の関係を理解することにより、英単語を効率的に書いたり読んだりする能力も身に付けやすくなります。フォニックスを学ぶことで英語学習全体の進度が速まり、英語力に自信が付くことが最大のメリットです。
英単語のつづりを見て正しく発音できるようになる
フォニックスを学ぶと、英単語のつづりを見ただけで正しい発音ができるようになります。
アルファベットそれぞれの音を覚えることにより、初めて見る単語でも適切な発音が可能です。英語の音を聞く際の理解度が向上し、リスニング力も身に付きます。
英単語のつづりがわからなくても、音を聞き取って書けるようになる
フォニックスを学んでいると、音を聞いてそれがどの文字に対応するかをすぐに理解できるようになります。そのため、英単語のつづりがわからなくても、音を聞き取ってその単語を書く力が身に付きます。
正しい発音が身に付き、英語の上達が早くなる
フォニックスを学ぶと、アルファベットの音と組み合わせをしっかりと理解でき、正確な発音を身に付けられます。正しい発音の習得は、スピーキングに対する自信を深め、英語をよりスムーズに話すための重要な要素です。
発音が上達するにつれて、聞き取る力や理解力も自然と向上し、英語力が早く身に付きます。
フォニックスの欠点
フォニックスにはいくつかの欠点も存在します。英語の不規則なつづりの単語や、文脈で理解する必要がある部分については限界があります。また、日本語が主流の環境では、英語の実践的な使用頻度が限られており、発音の上達が難しい場合があります。
例外的な単語をカバーできない
フォニックス学習は主に規則的な発音ルールに基づいていますが、英語には例外的な発音を持つ単語が多く、全体の約30%を占めます。こうした単語のことをサイトワードと言い、フォニックスの発音ルールだけでは正しく発音できないため、丸暗記が必要になります。
また、サイトワードには使用頻度の高い単語が多くあるため、これらを避けて英語を習得することはできません。
文字や単語を読めても意味がわからない
フォニックスを学ぶことにより文字や単語を正しく読めるようになるものの、その意味を理解するためには別の学習が必要になります。文字と音を正しく結びつけることと、単語や文章の意味を理解することは別のプロセスです。
このため、単に発音やつづりに集中するだけでは英語理解が十分ではなく、さらなる学習が不可欠です。
英語に触れる機会が少ない
日本語が主流の環境においては、日常生活の中で自然に英語を聞いたり話したりする機会が限られています。フォニックスを学んでも、それを使う場面が少ないと実践を通しての習得が難しくなります。
実際の会話やリスニングを通じて得られる生きた英語のスキルを補うためには、意識的に学習環境を整える必要があります。
フォニックスを取り入れた英語学習方法
フォニックスには楽しみながら学習できる方法がたくさんあります。アプリやYouTube、英会話教室などを活用し、子どもの興味や学習スタイルに合わせた方法を選ぶと良いでしょう。
フォニックス学習の手順
フォニックスを効果的に学ぶための手順は以下です。
- 簡単な母音と子音の音を聞くことから始める
- 絵やフラッシュカードを使ってその音がどの文字に結びつくかを理解する
- 短い単語を組み立て、実際に声に出して練習する
段階的に正しい発音とスペルの感覚を養い、さらに複雑な単語や文に挑戦していくことで、英語学習の土台を築きます。
アプリで手軽に学習
フォニックス学習アプリは、歌やゲームが多用されていて、楽しく学ぶことができます。フォニックスのルールを目と耳で直観的に吸収できるメリットがあります。
また、アプリの音声機能を通じて、正しい発音を自然に学ぶことができ、苦手な部分を繰り返し練習することも可能です。フォニックス学習アプリは、いつでもどこでも学習が可能で、自分のペースで進められる手軽さも大きなメリットです。
YouTubeで楽しく学習
YouTubeにはフォニックスを効果的に学ぶための動画が多数存在し、多様な学習法を試すことができます。歌やアニメーションを通じて、子どもに親しみやすい形で英語の正しい発音を学べるのが特長です。
また、さまざまなクリエイターが異なる視点から教えているため、子どもの興味を引くことができ、飽きずに継続しやすいメリットがあります。
英会話教室でしっかり学習
英会話教室で講師の直接指導を受けることにより、発音の微細なニュアンスまで正しく習得できるという大きなメリットがあります。実際に会話を実践しながらの学習は非常に効果的で、講師がその場で疑問を解決してくれるため、理解度が高まります。
同世代の友達と一緒に学ぶことで競争心やモチベーションを維持し、楽しい学習体験が得られます。
フォニックスは何歳から始めるべき?
フォニックスは、幼児期から始めることで英語学習の土台を効果的に築くことができます。子どもの発達状況に合わせた適切なタイミングで始めることが重要で、楽しく学べる環境を整えつつ、子どもの反応を見ながら進めると良いでしょう。
小学校低学年
普段から英語で生活している子どもは、3~5歳にフォニックスを始めると良いとされています。日本語で生活している子どもは、フォニックスを始める前に英語の音に慣れておくことが必要です。
幼児期からたくさんの英語に慣れ親しみ、ある程度の英語を聞いてわかる、言えるという英語力の下地ができている小学校低学年くらいから始めるのが効果的です。
小学校低学年の子どもは新しいことを吸収する力が強く、この時期にフォニックスを取り入れることで、英語の正しい発音を自然に身に付けることができます。
スペルに興味を持ち始めたとき
子どもが英単語のスペルに興味を持ち始めたタイミングは、フォニックス学習を始める絶好の機会です。興味を持つことで自ら進んで学ぼうとする意欲が高まるため、学習が楽しくなり、より効果的にフォニックスの発音を身に付けることができます。
この時期に簡単な単語から始め、徐々に難しいものに進めると、理解力も深まります。
反応が良くない時は無理強いしない
フォニックス学習に対して子どもの反応が良くない場合は、無理に続けない方が良いでしょう。無理強いは学習に対する嫌悪感を引き起こすことがあり、長続きしません。
少し時間を置いたり、別の角度から興味を引く方法を試してみるなど、子どものペースに合わせることが大切です。
年齢による影響
フォニックスは一般的に幼少期の学習方法として知られていますが、年齢によって学習効果に差が生じることがあります。幼少期は言語習得能力が高く、フォニックスを通じて自然に音と文字の結びつきを学べますが、年齢が高くなるほどカタカナ読みの影響を受け、習得のスピードが遅くなる可能性があります。
フォニックスは英語習得の近道
本記事ではフォニックスの特徴や、メリット・デメリットについて詳しく解説しました。
フォニックスは、音を聞いて文字の読み方を理解する方法であり、英語学習の土台を築く上で非常に効果的です。正しい発音を幼い頃から習得することで、その後のリスニングやスピーキング能力が大きく向上し、英語に自信が付きます。
特に日本人はリスニングやスピーキングが最も苦手とされています。苦手意識が出てしまう前にフォニックスを取り入れることが、英語力を身につける近道になります。